夫婦
for Vc. & Fg. (2025)
INSTRUMENTATION
Vc. & Fg.
DETAILS
Duration
12'00"
First performance
11 November 2025
performed by Kei Yamazawa(Vc.) & Mariko Fukushi
at Toyosu Civic Center. in Tokyo Japan
チェロとファゴット(バスーン)のための作品は、決して多くはありません。どちらも低音を支える役割を担う楽器であり、オーケストラの中では縁の下の力持ちとして機能しています。かつての社会において、男性は外で働き、女性は家庭を守るといったように、夫婦の役割はある程度固定されていました。しかし、時代とともにその在り方は変わりつつあります。
チェロもファゴットも、高音で旋律を奏でることは本来の「役割」ではありません。けれども、二人だけでアンサンブルを組むとなれば、どちらかが旋律を担い、もう一方が支える――といった新たな関係性が自然に生まれます。オーケストラという社会を一歩出れば、楽器たちにも“自由”が与えられるのです。決められた役割に縛られず、音楽という対話の中で、自分たちなりの関係性を築いていくことができます。
第1、2曲では、止まることのない繰り返される無窮動の単旋律を交互に演奏し、お互いが合いの手を入れる形で展開されます。第3曲は二部構成で、前半は古典的なハーモニーと旋律が現れ、後半は第1、2楽章を振り返りつつコーダへと進みます。チェロとファゴットは、本来の特色を超えて新たな音楽的関係性を描き出します。
この作品は、半分は私小説ならぬ“私音楽”、半分は理想の夫婦像を描いたものです。互いに耳を傾け、支え合い、時には役割を入れ替えながら歩む――そんな夫婦になれたらいいな、と。